子どもも大人も主役の4日間。北海道東川町で北欧発祥のプログラムを体験

子どもの世界を広げたい、いろんな体験をさせたい。

子育て中の親は、つい「子どものため」と子どもを優先させ、自分のことを後回しにしてしまうのではないでしょうか。


今回ご紹介するプログラムは、子どもだけではなく親も主役になれるプログラムです!

プログラムを実施するのは、北海道・東川町にある「School for Life Compath」(以下、Compath)。

デンマーク発祥の全寮制学校「フォルケホイスコーレ」をモデルにした「大人の学び舎」です。アートや自然体験、地域文化の探求を通して、地域と協働しながら自分と社会を見つめ直す学びを提供しています。

ちなみに、フォルケホイスコーレは、デンマークでは「人生の学校」と呼ばれ、人生の転機や岐路に立つさまざまな世代の人々が集い、共に暮らし、対話を重ねながら「より豊かに生きること」を学ぶ場です。学校ですが、試験や成績もありません!

「なんで日本にはないんだろう、欲しいね」という想いが、Compathの始まりだそうです。Compathではフォルケホイスコーレの理念を受け継ぎながら、日本の文化や社会にも合うように独自のプログラムを展開しているとのこと!
※Compathの想いやコンセプトについてHPもご参照ください。

https://schoolforlifecompath.com/

子どもも一緒に参加できるのは、日本ならでは!

本場デンマークでは子どもと一緒に参加できる“ファミリーコース”はないそうですが、「子どもを連れて参加したい」という要望があり生まれたのが「Compathファミリーコース」なのだとか!

このファミリーコースは、子どもを預けるのではなく、親も子もそれぞれが夢中になりながら、互いの様子が見える距離で、同じ学び舎で共に暮らせる点が、大きな魅力です。

では、親子で過ごす4日間は、どんな時間になるのでしょうか。

現地参加した「親子deワーケーション」運営メンバーの内田が夏のファミリーコースの様子をレポートします!

校舎の窓からは大雪山系が見える

肩書きを置いて、自分のことを知ってもらう

Compathの校舎は、最寄りの旭川空港から車で15分ほどの場所にあります。

集まった参加者は、東京や神奈川から訪れた2歳から小学4年生までのお子さんとその親たち。二児を連れワンオペ旅に初挑戦する母子や、大人単身での参加者もいました。

スタッフ合わせて総勢15名、校舎1階のホールに円を描いて座ったら、肩書きを一旦置いて、まずは「今の気持ち」を話してみることから始まります。ここでは、子どもから大人まで、スタッフや参加者問わず、みんなあだ名で呼び合うのがルールです。

そのおかげか、初めて会う親子たちもすぐに距離が縮まります。まるで“みんなで子育て”している空気が生まれるから不思議です。

初日の自己紹介。肩書きに触れずあだ名で呼び合う

さわる、話す、親子で似顔絵づくり

最初は、親子一緒のプログラム「さわる似顔絵づくり」。

まず、親子が互いの顔に触れて確かめ合います。

似顔絵を描くキャンバスは布一枚。素材は草木でも石でも毛糸でもなんでもOK。校舎を飛び出して、素材探しに向かいます。もこもこ、ツルツル、ざらざら…葉っぱ一つとってもこんなにも違うことに驚かされます。

見つけてきた素材を集め、似顔絵をつくっていきます。

親子は身近な存在ですが、顔のパーツに触れることなんて実生活では少ないですよね。このようなユニークなプログラムから共同生活が始まり「どんな4日間が待っているんだろう」と気持ちも高まっていきます。

初日の親子プログラム「さわる似顔絵づくり」で向き合う親子
素材を探しに校舎の外へ
互いの顔を形に
大人も夢中!

プログラム後は、行けるメンバーで車に乗り合い、近所の温泉へ。お風呂場からは東川町が一望でき、湯船に浸かるうちに参加者同士の距離も自然と近づいていきます。  

森を感じる温泉複合リゾート「キトウシの森きとろん」へは、Compathより車で6分

温泉施設にはキッズスペース付きの休憩所もあり、子どもたちもすっかりここがお気に入りの様子でした。


温泉施設内のキッズスペース。子どもたちの心を掴む秘密基地のような空間
初日の夕食は校舎前で「流しそうめん」と「みんなで作るピザ」で盛り上がり、地元のお子さんも加わって楽しそう

大人は“食”を通じて、自分を探求

いよいよ2日目。親と子別々のプログラムの始まりです。

講師はフランス校やミシュラン店での修行経験を持つシェフ・野上隼人さん。アメリカ南部の黒人伝統料理「ソウルフード」の起源を学びます。

単に料理を作るだけではなく「学びと問い」の時間も

単に料理を作るだけではなく、「食で大切にしていることは?」「あなたにとってのソウルフードは?」といった問いをきっかけに、大人同士の対話がはじまり、食を通して自身の好みや家族との思い出が一気に蘇ります。食には、場所や時間を超えて、心の奥に閉まっている「その人らしさ」を引き出してくれる、そんなことを感じた時間でした。

ソウルフードの起源を学ぶ大人たち

対話の後は、郷土料理に因んで南フランスに伝わる家庭料理「ニース風野菜の詰め物」をシェフと一緒に作っていきます。

シェフと一緒に料理づくり。間近で観るプロの手捌き
手作りブイヨンで真っ赤なトマトの詰め物を煮込んでいく。敷いたお米に素材とブイヨンのうまみが染み込んでいくように
大人の作品「ニース風野菜の詰め物」ができあがり!

子どもは「まちづくり」に夢中!

親が料理を作っている間、子どもたちは 「まちづくり」 に夢中になっていました。

講師は、探究学習塾でプログラム設計を手がけてきた石川峻さん。

校舎をキャンバスに、マスキングテープで太陽や家、草木や標識まで、まちを作っていきます。

サポートには、美術講師の資格を持つ保育士や学生ボランティアも入り、年齢や地域を超えた子ども同志の交流も生まれていきます。

地域の方々も交えた親子の昼食時間のテーブルには笑顔が溢れていました。


講師を囲む子どもたち。地域の子どもたちも加わり輪も広がる


「まちには何があるのだろう?」そんな問いかけから想像が膨らんでいく
校舎を舞台に階段から教室まで、カラフルなまちづくりに夢中の子どもたち
昼食の時間は、「大人が作った料理」と「子どもたちが手がけたまちづくりの作品」を囲みながらみんなで一緒にいただきます!

大人は即興演劇で、自分をほどく

3日目午前は「余白」と呼ばれる自由時間。午後からは、ふたたび親子が別れてのプログラム。

大人は「即興演劇」に挑戦します。講師は、劇作家の柴幸男さんと俳優の名児耶ゆりさんです。前半は、いくつかのアイスブレイク的なゲームから。緊張もほぐれてきたところで、後半は、即興演劇へ。

「子どもの頃の思い出」を題材に、チームに分かれ、それぞれのエピソードを元に小さな劇を作ります。気づけば、 “親として” ではなく、“一人の自分として”記憶をたどるような感覚になるのが演劇の魅力です。
「演じる」という非日常な体験を通して童心にかえるような、自分の内側に触れるようなそんな体験でした。

まずはゲーム形式で場が温まり、チームに分かれて即興演劇へ
演技を通して参加者のさらにユニークな一面が溢れ出る!

普段見せないお母さん、お父さんの一面を発見!

いよいよ即興演劇を発表します。観客は、子どもたちや学生ボランティア。 笑ったり、驚いたり。子どもたちの見せる表情がとても印象的でした。「親が楽しんでいる姿を見せられるっていいな」。そう思った瞬間です。

童心にかえり演じる大人たちを見守る子どもたち

子どもは校舎の前で森の達人とツリークライミング 

大人たちが即興演劇づくりに夢中になっていた頃、子どもたちは校舎の前の大きな木に集まりました。

“木をきらない樵(きこり)”として知られる森の達人・清水省吾さんと一緒に、ロープを使って木を登っていきます。体の使い方や安全な登り方を学びながら、ひとつずつ高さを積み重ねていく。窓越しに、子どもたちの真剣な表情や嬉しそうな姿を見守れるのも、この校舎で過ごす時間だからこそ!

清水さんの手にかかれば、校舎の目の前の木もツリークライミングの舞台に
後半は、ノコギリにもチャレンジ!木工クラフトの作品は、東川での思い出に!
親は自分のプログラムの合間に、窓から子どもたちの様子を見守る。保育士やボランティアなど手厚いサポート体制で安心

東川だからこそ、北欧の学びが息づく

Compathでの時間は、かつて北欧の家具や雑貨に惹かれていた頃の気持ちを思い出させてくれました。

「余白」と呼ばれる自由時間に東川町を散策してみると、大雪山の湧水、無垢材を使った家具産業、自然の近さ、そして、文化や教育に投資する町の空気。「暮らしを大切にする」という姿勢があちこちにあって、北欧に抱くイメージと重なる瞬間が何度もありました。

参加者みんなで訪れた東川を代表する家具メーカー「北の住まい設計社」。
カフェやベーカリーも併設され、洗練された空間で週末でもゆったり楽しめる
日本屈指の旭川家具、その産地の一つ東川町。大雪山系の無垢材を使った手仕事の家具


廃校になった小学校を再利用した工房

最終日は、言葉のカードを選んで贈り合う

いよいよ最終日、それを察してか朝から寂しそうな子どもたちの姿も。最後のプログラムは、親子それぞれ振り返りの時間です。

大人は、4日間の滞在を終えて、感じたままの「今の気持ち」を思いつくままに書き出します。その後、小さいグループに分かれて「今の気持ち」を共有し合います。その際、聞き手は、話しから受け取った印象を「言葉のカード」から選んで話し手へ贈ります。

自分の想いを言葉にして話し、受け止めてもらうことで、「自分なりの気づき」と「自分では気付けない発見」に背中を押してもらえるような体験でした。

子どもたちも、4日間を終えた今の気持ちを画用紙いっぱいに絵で表現していました。

最終日、感じたままを書き出していく、ルールはなく、何を書いてもOK!
2Fのワークスペースで思いのままをジャーナリング
聞き手は「今の気持ち」を受け止め、「言葉のカード」を選んで贈る
子どもたちも振り返り

忙しい子育て世代にこそ

Compathファミリーコースは、親も子も「育ちあう関係性」をテーマにしています。それぞれが夢中になれる体験の時間があり、一方で「余白」と呼ばれる自由時間も大切にされています。

大人は、授業での気づきから対話を深めたり、仕事をしたり。
子どもたちは、宿題をしたり、遊びの続きをしたり。

余白の時間には、みんなで温泉や東川町の人気店に出かけることもありました。

ファミリーコースの紹介ページには、こんな言葉があります。

対話や体験を通じて、親として・子としての「役割」ではなく、
一人の人として向き合い、ありのままの自分を大切にする関係を育みます。

大雪山の麓、木のぬくもりがたっぷりの校舎で、出会った家族と共に暮らし、学ぶ日々。

親も子どもも、自分の探求と、一緒に寄り添う時間と。その両方を行き来できる心地よい距離感。

ここには「みんなで子育てする」あたたかさと、探求学習の設計者や保育士、子育て中の企画者、学生ボランティアなど、子どもの心に寄り添える大人たちが支えてくれる安心の環境があります。

出会いや体験から生まれた気づきと思い出を胸に、深呼吸して、日常へ戻っていくような…。
ここでの立ち止まる時間が、これからの自分の背中を押してくれるような感覚でした。

プログラムは校舎を拠点に行われ、移動の負担がないのも親子にとって心強いポイントです。

希望すれば、前後の延泊も可能。空き状況次第では、滞在型のワーケーションとして過ごすのも良さそうです。中には、3週間滞在したご家族も。

町には図書館やカフェなど、仕事が捗る場所も多く、夏は避暑地、冬はウィンタースポーツの拠点としても魅力的。延泊したくなる気持ちもわかります。


忙しい子育て世代だからこそ、親子で“寄り道”をしてみませんか。
立ち止まるからこそ見えてくる新しい発見を探しに。

朝の余白時間。ワークに集中する大人の横で宿題に取り組む出会ったばかり子どもたち
参加者提供のコーヒーの香りに誘われ、キッチンに人が集まっていく。一つ屋根の下に住む大家族のような朝の風景
会話が弾む週末の夜
最終日、運営スタッフとの別れを惜しむ子も

夏に続き、冬のファミリーコースも開催予定。冬のCompathならではのプログラムにもぜひご注目ください。

2026年1-2月 冬のファミリーコース 詳細はこちら。https://oyakodeworkation.com/workation/8725.html

施設紹介:School for Life Compath
公式サイト:https://schoolforlifecompath.com/
所在地:〒071-1464 北海道上川郡東川町進化台781-6

施設紹介:キトウシの森きとろん
公式サイト:https://www.higashikawa-kitoron.jp/
所在地:〒071-1404 北海道上川郡東川町西4号北46

施設紹介:東川町複合交流施設「せんとぴゅあ」
公式サイト:https://higashikawa-town.jp/CENTPURE
所在地:〒071-1426 北海道上川郡東川町北町1丁目1−番1号

施設紹介:北の住まい設計社
公式サイト:https://www.kitanosumaisekkeisha.com/
所在地:〒071-1437 北海道上川郡東川町東7

ライタープロフィール

内田 陽子

プランナー&コーディネーターの内田です。

北欧には、人生の転機や岐路に立つ人が集う「人生の学校」があるとはじめて知りました。その日本版ファミリーコースがあると聞き、今回体験してきました。単身での参加でしたが、息子が小さかった頃の慌ただしい日々がふとよみがえり、「こんな場所があったなら、一緒に来たかった」と心から思える場でした。

株式会社ソトエ プランナー/コーディネータ

東京育ちだが、幼少期は海と山に囲まれた地域で夏休みを過ごし、それが原点に。学生時代にニュージーランドでファームステイを経験し、多様な生き方や文化に惹かれる。旅行会社で海外旅行を担当し、総合旅行業務取扱管理者取得。出産後は友人家族とのアウトドア企画が趣味に。子どもの体験機会を増やし、視野を広げたい思いから親子ワーケーションに共鳴し、ソトエ創業時より参画。現在は企画監修とwebメディア「親子deワーケーション」運営を担当。国内ローカルの魅力に夢中。1児の母。

総合旅行業務取扱管理者